cinema staff

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残響レコード所属の岐阜出身の4人組ギターロックバンドの1stフル・アルバム。
まさに残響直系、といった感じの衝動のまま鳴らさられる音は、エモ、ポストロックといった方面からの影響が色濃く感じられ、時に攻撃的で、時にポップ。また、Vo.飯田瑞規の透き通るような歌声も、このバンドの大きな特徴の一つと言っていいだろう。
彼らはこれまでにミニアルバムを3作とシングルを1作発表しているが、今作はまず一聴した時にこれまでの作品とは少し毛色の違うものに感じられた。それは、どこか内を向いていたものが、今作では外を向いたようにも聞こえたからかもしれない。それはもちろん進化に他ならない。バンドアンサンブルはより複雑なものになり、かといってポップさは忘れず、さらに作品を通してのメッセージ性は強く、明確になっている。このアルバムで歌われるのは、海への憧憬とその旅路。それを通して葛藤や不安、戸惑いとの戦いを表現している。
#1:白い砂漠のマーチから多少の緩急を織り交ぜながらも疾走感ある楽曲がラストの#11:海についてまでノンストップで続く。どの曲も秀作だが、惜しむらくはアルバムを通して聞いた時に「これはっ!」と印象に残る曲があまりないという点。しかし、それは全体として、楽曲がよくまとまっており、アルバムとしてよく完成されていると捉えることができる。
#11:海については7分超の大作。超変則チューニングで印象的なメロディーを奏で、作詞の三島想平が「僕の海に対しての思いを完結させたい、と意気込んで書いた」という、どこか悲しくて寂しいような、でも前を向いて、“もう行かなきゃ”と訴えている詞を、飯田が情感込めて歌い上げている。名曲。他に個人的に気に入ったのは#1:白い砂漠のマーチ、#2:火傷、#3:skeleton、#8:実験室、#10:どうやら。#3:skeletonの“僕たちはうまくやれる。わずかな正体を隠したまま”という一節がものすごく好き。

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